2011年02月18日

ソーシャル・ネットワーク

 実話をもとにしている、ということで、だからまず、高額の賠償金をもとめられるような訴訟ざたになってしまっているビジネス世界の話なのだということを印象づけられる話の展開ではあるのだけれど、それを創った若者からすれば、ただ自分の理想を純粋に徹底して突き詰めただけなのだ、という視点が、うかがえもする。彼からすればたぶん、ほんのちょっとしたアイディアとか資金とかで、ぐだぐだ言って邪魔をしないでもらいたい、といったところなのではないだろうか。そういった、他者に対する配慮の不足が、彼をそして追いつめることになっていそうなのだけれど、でもどうだろう、そのような傲慢だったり偏屈だったり不許容だったりするところが、彼をネットワークの世界へと導き、多くのひとびとを魅了して取り込んでしまう怪物のような世界をうみださせたとも言えそうでは。
 冒頭のものすごいスピードでなされる言い争いが、じつは争うつもりなど毛頭ない、恋人との語らいだということに、たとえ顔をつきあわせていても、コミュニケーションというのはいかに難しいものなのかということが、思い知らされる。相手を思いやることと、自分の主張を正直にぶつけるということの折り合いをつけることの、難しさ。その難しさを思い煩い、なんとか解決しようと努力することを思いつかない人間には、あるいは、ネットでのコミュニケーションのほうが、楽であったりするのかもしれない。衝突に疲れたら、アクセスをやめればいいだけなのだから。
 それでも、生身のあたたかさ、やさしさ、愛らしさに、触れたい、その欲望はたぶんなくなってはくれないし、それがあるからこそ、いろんなものは生まれてしまうし、しかも、それではまだまだ満たされない世界がのこる、ということが、ラストにしみじみせつなく迫ってきたりして。

 シネプラザサントムーンにて、2011年2月

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Posted by 中島遥香 at 21:04 │◆映画レビュー2011年映画館でアメリカ映画

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