2017年04月04日

ヒトラーの忘れもの

 よかったです快作。テーマ自体やはり興味深いのですけれどいかにもお涙ちょうだい的な甘ったるさはなく、とても、考えさせられます、冒頭のおもわず目を背けたくなる理不尽な衝動的暴行にはむろんいくらか反発を覚えずにはいられないのですけれどよくよく考えてみればたしかにそれも無理はないのか、とぼんやりやりきれない心地、そんな抑えきれない怒りの前にあらわれた、まだあどけなさの残る少年兵たち、ナチスが残していった地雷を撤去させるために集められた彼らに対し、そうお前らなんか死んでもかまわない、まったり悪びれずに言い放ってはみたものの。
 うろうろ歩き回りいらだち、憮然とジープを乗り回す軍曹の揺らぎが物語がすすむにすれて、行きつ戻りつ、憎しみと憐憫のせめぎあいに身をさかれそうな苦痛が全身からほとばしって、ようやく、平和な心持ちにたどりついたか、と微笑ましい気持ちになってもすぐにまた裏切られる危なっかしさおそろしさは、地雷を見つけたときの緊張感、うまく処理できてほっと安堵した瞬間、なのに帰れなかった絶望感と、重なって、危機と悲劇はどこまでも果てしなく抜かりなくくり返され、やりきれなさを共有するかなしさと、それでも前へすすむ気休めの希望とが、眼前の澄みきった水平線のようにつかみどころなく。
 自分を見失いそうになりながら未来を見失いそうになりながら、それでも一縷の希望にすがることを諦めなかった人間の力強さが、ラストの余韻に。
 冷酷無慈悲の態度を蝋人形さながらくずさなかった大尉がやたら印象にのこる、とおもってたら『ロイヤルアフェア~』で魅力放ってた王様だったんですね、すごいひとなのでは。

ヒトラーの忘れもの

 シネプラザサントムーンにて2017年3月

 ヒトラーの忘れもの 公式ホームページ


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Posted by 中島遥香 at 18:58 │◆映画レビュー2017年映画館でヨーロッパ映画

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